書評 『自然エネルギー市場』 尾崎万里奈
- 作者: 飯田哲也
- 出版社/メーカー: 築地書館
- 発売日: 2005/03/01
- メディア: 単行本
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「NPO法人北海道グリーンファンド(以下HGF)」は、そうした地域主導の取り組みのひとつだ。持続可能な社会を目指し、市民の手によるエネルギーづくりを実践することを目的として設立されたNPOであり、グリーン電気料金制度による基金積立と、それらを利用した風力発電事業の運営を主な活動としている。HGFの取り組みによって、2001年から北海道浜頓別町で運転が開始された国内初の市民風車「はまかぜちゃん」。その運営費は、毎月省エネによって節約した電気料金5%分を寄付してつくる「グリーンファンド」と市民からの出資によって賄われる。そこでは、年間約900世帯分の電力が発電され、電力会社の配電線を通して町民全体に供給されている。こうした市民風車は、持続可能なエネルギーづくりにとどまらず、地域社会の自律を促し、市民による出資のしくみをつくりだしており、地域主導の新しいエネルギー政策の可能性をも示している。
本書は、環境・エネルギー問題に関心のある読者のみならず、自然エネルギーの分野で新しいビジネスをしたい人、地域自治や市民活動に主眼を置く人にとっても学ぶところが多い。市民が直接選択できるエネルギーを増やし、エネルギーの分権化を目指す。そこから始まる新しい自治の姿は原子力と自然エネルギーの一キロワットがそれぞれ違う価値をもつ、持続可能なエネルギー社会の姿と重なりあっている。
プロフィール
尾崎万里奈
神奈川の南の方で生まれ育つ。3年前に山形にやってくる。2011年4月からはたぶん神奈川在住(予定)。芸工大でアートと教育について学び、その後1年間ぷらっとほーむで若者UJIターン推進事業スタッフとして主にインタビュー調査のお仕事をする。書評を書いたりもする。好きな食べ物は麺類。ただいま絶賛節電中。